この文書では機構解析プログラムDADSと有限要素解析プログラムANSYSを用い て柔軟物体を含むロボットの動作の解析を行う際の実際の手順を述べる.なお 今後,柔軟物体を弾性体と記述することにする.
  1. 準備

    まず一番最初に行うことは,ロボットの中でどの部位を弾性体として取り扱う かを決定することである.実際にどの部位を弾性体とするかは予備解析の結果 や実機の挙動から判断すべきである.また,今まで行った解析から判断すると あまりに小さい部位のみを弾性体とするとその部分に振動が生じ,正確な解析 が実行できない場合がある.

  2. ANSYS上でのモーダル解析

    1. 有限要素モデルの作成

      弾性体として取り扱う部位を決定したら,その部位の有限要素モデルを作成す る必要がある.この作業はANSYS上のプリプロセッサで実行する.ANSYSは四辺 形の六面体等の単純な形状ではないとメッシングを行えないので,幾何形状を 作る際は直方体を並べて作ると後々楽で良い.

      1. 幾何形状のモデリング

        まずその部位の幾何形状のモデリングを行う.この作業は ANSYS の prep7 で実行する(具体的な作業はマニュアルを参照).また ANSYS は IGES とのイ ンタフェースも備えているので,他のソフトウェア,例えば AutoCAD などで 幾何モデルを作成することも可能である.

      2. 特性値の設定

        次に使用する要素の選択及び,材料定数とリアルコンスタントの設定を行う.

        要素の決定(Preprocessor -> Element Type -> Add)
        一般的な場合には要素には Solid73 を用いると良い.この要素は六面 体八節点の要素で,各節点に置いて x,y,z の3方向の変位と回転の合計6自 由度を有しており普通の解析ではこの要素で十分である.

        材料定数の決定(Preprocessor -> Material Props)
        ヤング率,ポアソン比,密度を設定すれば良い.

        リアルコンスタントの設定(Preprocessor -> Real Constant)
        リアルコンスタントは材料特有の値ではなく形状に特有の値であるが,同 様にで設定する.例えばBeam 要素を用いる場合には解析の際に断面積等が必 要になるが,この場合はこれらの値がリアルコンスタントになる.なお Solid73 を用いる場合にはリアルコンスタントを設定する必要はない.

        これらを設定後,弾性体の各部分に対してどの要素,材料定数,リアルコンス タントを使用するかを定める(Preprocessor -> Attributes -> Define).

      3. メッシング

        次にメッシングを行う.メッシングの手法としては Mapped Mesh を使用する が,これは要素の切方を指定しておいてからメッシングをする方法である.

        要素分割数の設定(preprocessor -> Meshing -> Size Cntrls -> Lines)
        具体的には各々の線についていくつの要素に分割するか指定する.

        なお平行な線については値が保存される.

        メッシング(preprocessor -> Meshing -> Mesh -> Volumes -> Mapped Mesh)

    2. モーダル解析

      実際に解析を行う.解析フェーズは solu で行われる.モーダル解析とは変位 モードを求める解析のことだがDADSで使用できる変位モードには二種類あり一 つが動的モード,もう一つが静的モードである.簡単に言えば動的モードは弾 性体に振動が生じたときに生じる変形であり,静的モードは弾性体に外力が加 わったときに生じる静的な変形である.動的モードは Modal Analysis を用い て,静的モードは Static Analysis を用いて求める.

      なお解析したときに作られるファイルの内,.rst ファイルと .emat ファイルが DADS で必要になる.

      1. 動的モード

        準備
        解析手法として Modal Analysis を選択する(Solution -> Analysis Type -> New Analysis).また解析オプションとして求める変位モードの数 を設定する(Solution -> Analysis Options 内の No. of modes to extract).

        拘束条件の設定(Solution -> Loads -> Apply -> Displacement -> On nodes)
        弾性体内でロボットの他の部分に接続している節点を一つ選択する.そして, その節点の先にのべた6個の自由度に関して変位量0の拘束をかける.

        解析の実行(Solution -> Solve-Current LS)

      2. 静的モード

        静的モードの解析は具体的には,ある節点にある方向の単位荷重を加え,その 時の変位を求めるということを求めたい節点と方向の組み合わせについて繰り 返すということを行う.普通の解析では弾性体内でロボットの他の部分と接続 している節点についてのみ,6方向の単位荷重についての変位を求めればよい.

        準備(Solution -> Analysis Type -> New Analysis)
        解析手法として Static Analysis を選択する.

        拘束条件の設定(Solution -> Loads -> Apply -> Structural -> Displacement -> On nodes)
        弾性体内でロボットの他の部分に接続している節点を一つ選択する.そし て,その節点の先にのべた6個の自由度に関して変位量0の拘束をかける.

        Load Stepの設定
        先述したように静的モードの解析にはそれぞれの場合について繰り返し解 析を行う必要があるので,全ての場合のLoad Step ファイル(Load Stepファイ ルには各節点にかかる力などのデータが記述されている)を作る必要がある. ある節点にある方向への単位荷重を加えるにはSolution -> Loads -> Apply -> Structural -> Force -> On nodes で行えるが,これを全 ての場合で実行するのは大変である.そこで以下のようなファイルをつくって おき,これを ANSYS にコマンドファイルとして読み込むことによって,この 作業を実行することができる.
          f,,,1
          lswrite
          fdele,,
          以下これが続く
        
        一行目で節点と力の方向を指定している.二行目でファイルに書き出してい る.三行目で一行目で設定した力を削除している.これを全ての場合につい て書いておく.

        このファイルをコマンドファイルとして読み込むためにはMainmenu -> File -> Read Input From を使用する.これを実行すると 拡張子が . s というファイルが作成されるがこれが Load Step ファイルである.

        解析の実行(Solution -> From LS Files)
        実際に解析を実行する.Starting LS file と Ending LS file にこの前の 部分で製作された Load Step ファイルの数字を指定する.

    3. 結果の確認

      結果は post1 で確認することができる.変形図は General PostProc -> Plot Results -> Deformed Shape で画面に表示できる.またモードは General PostProc -> Read Results -> Next Step で変更することがで きる.

  3. ANSYSのデータをDADSのデータに変換

    次にANSYSでのモーダル解析で出力されたファイルをDADSで使用できる形に変換す る.

    1. 必要なファイル

      必要となるファイルは

      • Modal Analysis で作られた .rst ファイル
      • Static Analysis で作られた .rst ファイル
      • .emat ファイル(Modal Analysis で作られたものでも,Static Analysis で作られたものでも良い)
      • .mp ファイル( ANSYS 上の prep7 で mpwrite と打つと作られる)
      の四ファイルである.これらを同じディレクトリに置く.

    2. ファイルの変換

      変換作業は /opt/JSK/dads/dads85/execute/dfbt を使用して実行する.実際 の変換の手順を示す.

      Enter finite element program name>
      使用したFEMソフトウェアの指定. ANSYS と入力.
      ANSYS modal analysis results file>
      Modal Analysis の結果のファイルを指定する.
      ANSYS static constraint analysis results file>
      Static Analysis の結果のファイルを指定する.
      ANSYS element matrices file>
      .emat ファイルを指定.
      ANSYS material properties file>
      .mp ファイルを指定.

      それ以外の質問については [return] を押せばよい.実行した結果として .flex ファイルが作られる.これを DADS での解析の際に利用する.

  4. DADS 上でのロボット全体の解析

    ここでは弾性体を含む場合に,注意すべき点についてのみ述べる.

    1. 使用する変位モードの選択

      変位モードの選択はDADS/Flex(Mainmenu の Tools の中)を使用して行う.ま ず使用する flex ファイルを選択し,create mode set で使用する変位モード を決める.

    2. 弾性体要素のモデルへの組み込み

      1. まず flexible element を create し,使用する .flex ファイル及び mode set を選択する.

      2. flexible element にする body を 選択し,Mass Properties の中で Rigid Body を Flexible Body に変更する.

      3. ついでに geom create で flexible の geometry ファイルを作っておく と良い.

    3. ファイルの書き換え

      rst ファイルを使用する場合は flexible body の各モードのリスタート部分 が必要になるので,書き換えを行う必要がある.


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matsuki@jsk.t.u-tokyo.ac.jp