電場応答性高分子ゲルロボット

大武美保子
2003.4.4
  1. 研究目的
    本研究は、機械のやわらかさを実現するために、 人工筋肉素材である電場応答性高分子ゲルで全身が構成される ロボット、ゲルロボットを実現することを目的とする。 力を発生し変形する柔軟な素材を用いて機械を 設計・制御する手法を明らかにできれば今までにない機械を実現できる。 本研究で用いる電場応答性高分子ゲルは、柔軟な構造と、 電場に応じて力を発生するアクチュエータ機能を持つ。 そこでこのゲルを用いて軟体動物型ゲルロボットを作ることを通じ 全身が物理的な柔軟性を持つロボットの設計・制御手法の基礎を確立する。
  2. ゲルロボットの設計・制御
    ゲルロボットを設計・制御する上で、 従来のロボットとの本質的な違いは以下のように整理される。
    設計:
    従来のロボットは全体として変形しないものに、関節などを追加することに よって 部分的に変形するように設計する。 これに対しゲルロボットは、全体として変形するゲルを 部分的に変形しないように設計する。
    制御:
    従って、従来のロボットの可動部分は有限個であり、 内部から信号を送って直接角度や長さを制御することが可能である。 一方、ゲルロボットの可動部分は動くように設計されたゲル素材全体に渡り、 その自由度は無限大である。 その代わり、外部電場との相互作用により変形するメカニズムを利用して 外部から信号を送って多数の点を一度に制御する。
  3. 進捗状況
    研究を三段階に分けて行なってきた。 まず最初に、設計手法を明らかにすることを目的として、ゲルと電場の基礎特性の測定を 行なった。 次に、制御手法を明らかにすることを目的として、 ゲルと電場の変形モデリングとシミュレーションを行なった。 そして、提案する設計・制御手法の評価を目的として 軟体動物型ゲルロボットの製作と変形運動実験を 行なった。 一列に電極を並べた装置に 印加する電圧の組み合わせを定め、これを左から右に動かすと ゲル全体がくねりながらしゃくとり虫のように運動することを 実験的に確かめた。
    マトリクス状に並べた電極を用いて 平面を自由に変形しながら移動する軟体動物型ゲルロボットを作り、 柔軟ロボットの運動制御アルゴリズムを開発した。 たとえば、ヒトデ型ゲルロボットの表裏を反転させる運動を生成したり、 物体にタコのように巻きつく運動を生成することが可能となった。
発表文献
  1. M.Otake, Y.Kagami, M.Inaba, and H.Inoue. Motion design of a starfish-shaped gel robots made of electroactive polymer gel. Robotics and Autonomous Systems, vol.40, pp.185-191, 2002.
  2. M.Otake, Y.Kagami, Y.Kuniyoshi, M.Inaba, and H.Inoue. Inverse Kinematics of Gel Robots made of Electro- Active Polymer Gel. In Proceedings of the 2002 IEEE International Conference on Robotics and Automation, pp.3224-3229, 2002.
  3. M.Otake, Y.Kagami, K.Ishikawa, M.Inaba, and H.Inoue. Shape Design of Gel Robots made of Electroactive Polymer Gel. Proceedings of SPIE Vol.4234 Smart Materials eds. A. R. Wilson et al., 194-202, 2001.
  4. M.Otake, Y.Kagami, M.Inaba, and H.Inoue. Dynamics of Gel Robots made of Electro- Active Polymer Gel. In Proceedings of the 2001 IEEE International Conference on Robotics and Automation, pp.1458-1462, 2001.
  5. M.Otake, Y.Kagami, M.Inaba, and H.Inoue. Behavior of a Mollusk-Type Robot Made of Electro-Active Polymer Gel under Spatially Varying Electric Fields. Intelligent Autonomous Systems 6 E.Pagello et al.(Eds), pp.686-691, 2000.
  6. M.Otake, M.Inaba, and H.Inoue. Development of Electric Environment to control Mollusk-Shaped Gel Robots made of Electro-Active Polymer PAMPS Gel. In Proceedings of SPIE Vol.3987 Electroactive Polymer Actuators and Devices (EAPAD) ed. Y. Bar-Cohen, pp.321-330, 2000.
  7. M.Otake, M.Inaba, and H.Inoue. Kinematics of Gel Robots made of Electro- Active Polymer PAMPS Gel. In Proceedings of the 2000 IEEE International Conference on Robotics and Automation, pp.488-493, 2000.
  8. M.Otake, M.Inaba, and H.Inoue. Development of Gel Robots made of Electro- Active Polymer PAMPS Gel. In Proceedings of the 1999 IEEE International Conference on Systems Man and Cybernetics, pp.II 788-793, 1999.
  9. 大武美保子, 鏡 好晴, 國吉康夫, 稲葉雅幸, 井上博允. 電場応答性高分子ゲルマニピュレータの先端位置制御. 第20回日本ロボット学会学術講演会予稿集, pp., 2002.
  10. 大武美保子, 鏡 好晴, 稲葉雅幸, 井上博允. 無脊椎動物状ゲルロボットの能動−受動変形モデリング. 第19回日本ロボット学会学術講演会予稿集, pp.623-624, 2001.
  11. 大武美保子, 鏡 好晴, 稲葉雅幸, 井上博允. ヒトデ型ゲルロボットの全身変形運動. 第18回日本ロボット学会学術講演会予稿集, pp.1435-1436, 2000.
  12. 大武美保子, 石川耕平, 鏡 好晴, 稲葉雅幸, 井上博允. 軟体動物状ゲルロボットの厚さ分布形状設計. 第18回日本ロボット学会学術講演会予稿集, pp.1437-1438, 2000.
  13. 大武美保子,稲葉雅幸,井上博允. アクチュエータ機能を持つ電場応答性高分子ゲルの多リンク機構モデリング. 日本機械学会ロボティクスメカトロニクス講演会'00, pp.2P1-47-082, 2000.
  14. 大武美保子,石川耕平, 稲葉雅幸,井上博允. 電場応答性高分子ゲルを用いたロボットのしゃくとり虫運動. 日本機械学会ロボティクスメカトロニクス講演会'00, pp.2P2-61-092,2000.
  15. 大武美保子. 電場応答性高分子ゲルを用いた柔軟ロボットの形状設計と制御. 東大機械工学研究報告(平成12年大学院論文概要集), 第35巻, pp.231-232, 2000.
  16. 大武美保子, 中井博之, 稲葉雅幸, 井上博允. 電場応答性高分子ゲルPAMPSを用いたゲ ルロボットの設計. 日本機械学会ロボティクスメカトロニクス講演会’99, pp.2P2-62-071, 1999.
  17. 大武美保子, 石川耕平, 稲葉雅幸, 井上博允. 電場応答性高分子ゲルPAMPSを用いた ゲルロボットの開発. 第17回日本ロボット学会学術講演会予稿集, pp.583-584, 1999.

東京大学大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻 情報システム工学研究室
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